
多くの方が人生に一度は経験するであろう相続手続き。その際、特に金銭的な財産も負債もなく、残るのは評価額の低い持ち家のみ等であれば、放棄を選ぶのも合理的かもしれません。ただ、もし自分が相続を放棄した場合、その持ち家は一体どうなるのでしょうか。
相続放棄とは?
相続とは、特定の誰かが亡くなった際、その当人が所有していた資産や負債等を法定相続人、若しくは遺言等で定められた任意の相続人らが一括して引き継ぐ事を言うのですが、引き継ぐ側の人間がその権利を放棄する事を相続放棄と呼びます。相続をするという事は、亡くなった人の貯金や持ち家等といった資産だけではなく、借金等の負債も同時に背負う事になりますので、そういったリスクのある場合は相続を放棄するケースも十分に考えられます。なお、相続放棄は相続人全員が同意する必要はなく、一人一人の相続人の意思のみで独立して行う事が可能です。
相続放棄すると他の相続人のものに
そのため、もし相続人Aと相続人Bがいた場合、相続人Aが相続放棄をし相続人Bが相続に承認をすると、相続できる全財産は全て相続人Bが相続する事になります。そしてその反対に、相続財産が負債しかなかった場合も、相続人Bが全ての負債を引き受ける事になります。もし相続の手続き等が面倒だからといって安易に相続を放棄してしまった場合、確かに負債等のリスクは免れられるかもしれませんが、同時に大きな損をしてしまう可能性もありますので、相続放棄をする際には、被相続人の財産をしっかりと把握する等、慎重になった方が良いと言えるかもしれません。
相続人全員が放棄すると持ち家は放置されることも
また、上記の例で相続人AもBも相続を放棄し、その他の相続人がいなくなってしまった場合は相続財産の行き場がなくなってしまいます。その場合は、主に利害関係者等が申立人となって家裁に請求し、相続財産管理人が選定される事で相続財産の処理が始まるのですが、この申立人がいない事も多く、その場合は空き家となった持ち家が放置されてしまう事になり、近隣住民や自治体等の悩みの種となっているようです。また民法940条により、相続を放棄した場合でも、元の相続人は新しい相続人等の相続財産の管理人が現れるまでは相続財産管理の義務がある事になっており、そのせいで思わぬリスクを引き起こしてしまう可能性も考えられます。
相続放棄は慎重に検討しよう
上述した通り、相続放棄をしたからといって必ずしも持ち家等の管理義務を免れられるというわけではありませんので、相続放棄をする際にはその辺りも視野に入れて考える必要があるでしょう。昨今問題となっている空き家問題等もありますので、相続放棄をする際には、場合によっては慎重に検討した方が良いと言えるでしょう。